2021年12月03日

BLDCモータの制御

BLDCモータは効率が良く小型化が可能、長寿命で制御性も良いとあって大いに注目されています。今回はBLDCモータを上手に回すための制御方法を学びましょう。

つないだだけでは回らない
典型的なBLDCモータの一種である、インナーローター型BLDCモータの外観と内部構造を下に示します(図1)。ブラシ付きDCモータ(以下、DCモータ)は回転子にコイルがあり、外側に永久磁石が置かれていました。BLDCモータでは回転子に永久磁石が付き、外側はコイルとなっています。BLCDモータは、回転子にコイルがなく永久磁石ですから、回転子に電流を流す必要がありません。電流を流すためのブラシが無い「ブラシレス」が実現しました。

その一方で、DCモータと比べて制御が難しくなりました。モータから出ているリード線を電源につなげば良い、というわけには行きません。そもそもリード線の本数が違います。「プラス(+)とマイナス(−)を電源につなぐ」のとは異なるようです。

磁束の方向を変える
BLDCモータを回すためには、コイルに与える電流の方向とタイミングを制御しなければなりません。図2-Aは、BLDCモータの固定子(コイル)と回転子(永久磁石)を模式化したものです。この図を使って、回転子が回る様子を考えましょう。コイルは3個使うとして考えます。実際には、6つまたはそれ以上の数のコイルを使うこともありますが、原理を考える上では120度毎に置かれた3つのコイルを使うこととします。

モータは、電気(電圧・電流)を機械的な回転に置き換えます。図2-AのBLDCモータでは、どのようにモータが回転するのでしょうか。まず、モータの中で起きていることを見てみましょう。

BLDCモータでは3つのコイルを使います。この3つのコイルは、電流を流すと磁束を発生するものであり、U、V、Wと名が付けられています。このコイルへ電流を流してみましょう。コイルU(以下、「コイル」を省略します)に流す電流の経路をU相、VのそれをV相、WならばW相、と表記します。では、U相を見てみます。U相に電流を流すと、図2-Bにあるような矢印の方向の磁束が発生します。実際には、U、V、Wの片方のリード線は互いにつながっているので、U相だけに電流を流すことはできません。ここでは、U相からW相に電流が流れ、図2-CのようにUとWから磁束が発生するとします。UとWの2つの磁束を合成すると、図2-Dの大きな磁束となります。この合成磁束と中央の永久磁石(回転子)のN極が同じ方向になるように永久磁石が回転します。

合成磁束の方向を変えれば、永久磁石はそれに従ってついてきます。永久磁石の位置に合わせて、U相、V相、W相の通電する相を切り替えることで合成磁束の方向を変更し、これを連続することで合成磁束が回転して回転磁界が生まれ、回転子が回ります。図3に通電する相と、合成磁束の関係を示します。この例では、通電モードを1から6に順番に変更させると時計回りに合成磁束が回ります。合成磁束の向きを変更する速度を制御することで、回転子の回転速度を制御することができるのです。この6つの通電するモードを切り替えてモータ制御を行う制御方法を「120度通電制御」と呼びます。

滑らかな回転には正弦波制御
さて、120度通電制御では合成磁束の向きが回転するとは言え、その方向は6通りに過ぎませんでした。たとえば、図3の「通電モード1」から「通電モード2」に変化したとき、合成磁束の方向は60度変化します。すると、回転子も引きつけられるように回転します。その次に「通電モード2」から「通電モード3」に変化すると、またも合成磁束の方向は60度変化します。再び、回転子はこの変化に引きつけられます。これが繰り返されます。この動きは、「カクカク」感があるものとなります。時には、この動きが騒音にもなります。

120度通電制御の欠点を解消し、滑らかな回転を実現するのが「正弦波制御」です。120度通電制御では、合成磁束が6方向に固定されていました。これを連続的に変化するように制御します。図2-Cの例では、UとWが作る磁束は同じ大きさでした。しかし、U相、V相、W相を上手に制御すると、コイル毎に異なる大きさの磁束を作ることができ、合成磁束の方向を細かく制御できます(図4)。こうして、U相、V相、W相の各相に流れる電流の大小を調整しながら生成される合成磁束が、細かく連続的に生成されるように制御する事により、スムーズにモータを回転させることが可能になるのです。

インバータを使ってモータ制御
では、U、V、Wの各相に流す電流は、どのようなものでしょうか。分かりやすい120度通電制御で考えてみます。もう一度図3を見てください。通電モード1の時は、UからWへ、通電モード2の時はUからVへ電流が流れます。電流が流れるコイルの組み合わせが変わる度に合成磁束の矢印の方向が変化するのがわかります。では、通電モード4を見てください。ここでは、WからUに電流が流れます。通電モード1とは反対の方向ですね。このような電流の方向転換は、DCモータでは整流子とブラシの組み合わせで行っていました。しかし、BLDCモータではそのような接触型の方法は使いません。インバータ回路を使って電流の向きを切り替えます。BLDCモータの制御では、一般的にインバータ回路が使われるのです。

また、インバータ回路では各相に印加する電圧を変化させて、電流値を調整することができます。電圧の調整はPWM(Pulse Width Modulation=パルス幅変調)がよく利用されます。PWMは、パルスのON/OFFの時間の長さを調整して電圧を変化させる方法で、ON時間とOFF時間の比率(デューティー比)変化が重要な点となります。ONの比率が高いと、電圧を上げたと同様の効果が得られ、ONの比率が下がれば、電圧が下がったのと同様の効果が得られます。PWM実現のために、専用のハードウェアを持ったマイコンもあります。正弦波制御を行う際は3相の電圧を制御するため、2相にしか通電しない120度通電制御に比べてソフトウェアはやや複雑になります。インバータは、BLDCモータを駆動するのに必要な回路です。交流モータにもインバータは使われますが、家電製品で「インバータ式」とうたわれれば、ほとんどの場合はBLDCモータが使われていると思ってよいでしょう。

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Posted by maa2ya8 at 15:44│Comments(0)
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